【研究の背景】

 現在青森県におけるホタテの水揚げ数量は約8万8千トン(平成9年)に達し、その内の56%がボイル加工に充てられています。ボイル加工には一般的に釜ゆで方式と蒸煮方式がありますが、いずれの場合にも多量の煮汁が発生します。この煮汁は通常廃棄され排水処理施設を経て海域等に放流されますが、十分に排水処理しきれず、BODの上昇を招き環境汚染の原因の1つにもなっています。当社では未利用資源の有効活用を目的に、蒸煮加工で発生する煮汁を濃縮することにより食塩濃度を高め、長期保存を可能とし、ホタテ風味の調味料として安価に取引をしていました。

 一方、消費者の健康志向の増大に伴い、食品の持つ3つの機能、即ち栄養的役割(一次機能)、嗜好的役割(二次機能)、生体調整的役割(三次機能)のうち、近年特に三次機能としての生体調整機能が注目されつつあります。このことは、食品は単に食欲を満たす目的のものという従来の考えの上に、健康を守るうえで特に注意を払って摂取するべきものとする志向が加わり、さらに、食品こそ種々の病気・疾患を予防するものでなければならないという新たな願望が加わったのが大きな原因と考えられます。さらに現在では食品の生体調整機能の概念をさらに拡張し、病気の予防だけでなく治療までも視野に入れた「デザイナーフーズ」が登場するに至りました。このように健康食品・機能性食品に関する概念や市場の拡大に伴い、ますますその内容の高付加価値化が進むと考えられます。そのためにも健康食品業界では常に産業の原料となる新たな健康食品・機能性食品素材の探索・開発を盛んに行っています。当社と青森県産業技術開発センターはこの点に着目し、青森県の特産品であるホタテを原料とした新たな健康食品・機能性食品素材の開発を進めてきました。

 

【共同研究のリンク先】

青森県産業技術開発センター(グリコーゲンの抽出・分離・精製及び構造解析)

弘前大学医学部(動物実験:移植腫瘍細胞に対する抗腫瘍活性試験)

青森県環境保健センター(動物実験:化学発癌に対する抑制試験)